抜きの外注費を削減
折りの技術をベースに、特殊加工に特化する(有)篠原紙工(東京都江東区大島5-51-13、篠原勇社長)は昨年10月、イギリス・テクニフォールド社製スジ入れ装置「トライクリーザー」を導入し、スジ入れの際の問題となっている背割れや切れの問題を解消。外注による抜き加工に頼っていたシビアな仕事も内製化することで、外注費を削減するとともに、「見えないサービス」の提供で、背割れ問題に対するクライアントのストレスや不信感を払拭している。
創業は昭和49年。紙折り専業として産声をあげた同社は、特殊折りに特化することでその企業価値を高める一方、およそ20年前から展開する中綴じ製本事業においても、他社では頭を抱えてしまうような特殊な加工需要に真っ向から応えることで大きな成長を遂げてきた。
折りでは、普通の2つ折りから、折りあがり寸法で2×5センチ程度の化粧品の能書や、展開サイズが1,100×660センチの地図折りまで、ジャバラ折り、巻き観音折り、階段折りなどの特殊折りを大、小ロット問わず対応。一方、中綴じでは、小口の寸法が64ミリまでなら機械仕上げが可能で、アイレットステッチ(めがね綴じ)や特殊折りとの組み合わせによる様々な中綴じのアイデアを提供している。また、15年ほど前には、巻き折りの天地と小口の部分に剥離タイプの糊を付けるメーラー加工のサービスを開始。いまでは事業の柱として成長している。
そんな「特殊加工の篠原」を一躍有名にしたのが「NORITOJIC」の開発だ。中綴じの針金がリサイクルやPL法などで問題になる中、同社では針金を一切使用しない「糊綴じ」に注目。どの中綴じ機にも取付け可能な上、現行の生産性や生産ラインを崩さず、その機能を120%発揮できる糊綴じシステムを独自に開発し、昨年1月には特許も取得している。
「NORITOJIC」は針金の代わりに糊で製本処理をしているため、余分なゴミが出ず、リサイクルもしやすい環境に配慮した製本技術であるとともに、複雑な折りもできるため、高いデザイン性を付加することが可能である。最近では、成田空港のデューティーフリーフロアガイドにも採用されているという。
特殊な仕事を得意とする同社。当然、扱う紙も特殊紙が多くなる。その中には薄いが背割れしやすいものも多く、通常のスジ入れ装置では対応できないものも少なくない。また、「特殊な仕事=お金をかけている」ということもあり、クライアントはちょっとした割れも気にする傾向にある。それらは抜き加工に外注するわけだが、突発的な仕事に対しての管理が難しく同社でも大きな課題となっていた。
そんな矢先のこと。IGAS2007のケイズカンパニー(株)ブースに展示されたイギリス・テクニフォールド社製スジ入れ装置「トライクリーザー」と出会う。同社の篠原慶丞専務はその時の様子を次のように振り返る。
「ブースの隅に展示されているトライクリーザーによるスジ入れの品質の良さは一目瞭然で、抜きによるスジの入り方と区別できないほど良かった。早速、同業の仲間に声をかけ、翌日、再び会場を訪れた。ただ、その時点で当社は購入しなかったが、購入した仲間の評価は高く、いま思えばもっと早く購入しておけば良かったと後悔している」
「トライクリーザー」は、スジ入れの際に問題となる背割れや切れに着目し開発されたもので、輪転式の機械で85~350gsm(四六版換算で70kg~300kg)の重さの用紙における背割れ問題を100%取り除くことができる。そのポイントは、特許取得済のスジ刃にある。トライクリーザーには、他の機械のように紙の繊維を押しつぶすのではなく、紙の繊維を優しく押し伸ばすスジ刃が採用されており、これにより、単純に背割れは起こり得ない。
篠原専務は、「従来のスジ入れ装置では、鋭く刃が入ってしまうため、紙の繊維を壊してしまう。一方、トライクリーザーは、紙の繊維を壊さず、しかもしっかりしたスジが入る。これなら外注に出している抜きの半分くらいは社内に取り込めると直感した」と語る。
実際、トライクリーザーを導入したのは、昨年10月。計11台の折り機のうち、まずハイデル スタール製2台に設置。そして今年3月、さらに正栄機械製の折り機2台にも設置している。
とくに正栄機械用の2セットは、スジ刃の取り付け・交換が容易なファーストフィットタイプを採用し、メーカー純正のサポートローラーも含めた構成としている。サポートローラー上下各4個を含み、2本のスジ入れが同時に行える。
抜きの外注費削減と納期管理が容易になったことは、もちろん同社にとって大きなメリットだったわけだが、本来の狙いは違うところにある。それは「篠原の品質」を陰で支えるアイテムであるということ。昨年から一般クライアントとの直接取引で印刷から受注している同社。同社の真骨頂である「特殊加工」をエンドユーザーに直接アピールすることで、新たな需要喚起を狙っての展開だ。そこで気付いたのが、印刷・製本会社が品質に対して麻痺しているということだ。
「背割れに対しても『この紙は背割れしても仕方ない』という、いわば品質に対して麻痺している部分が多いことに気付いた。普段、紙を扱わないクライアントにしてみたら『なぜ背割れしているのか』という感覚で、それは不信感になるだけだ」(篠原専務)
同社では、トライクリーザーを導入したことによって、そんなクライアントのストレスや不信感を「見えないサービス」で解消できることが最大の導入効果だとしている。








